キャリア教育に必要なのは「人とつなぐこと」なのか?

学校外でキャリア教育に携わる活動をしていると、「学外からキャリア教育やプロジェクト学習の“コーディネート”をしてくれる人を求めてました!」と言っていただくことが結構あります。
とてもありがたいことですが、そこで言う「コーディネート」という役割が「人を紹介すること」だけだったりするとモヤモヤしてしまう、というのが正直なところです。

実際に、学外からキャリア教育に携わる人の中には、「人とつなぐ(紹介する)こと」を自らの役割と置いている人もいます。
学校でも、キャリア教育を学外の人と生徒をつなぐことだと思っているケースもあります。「視野を広げてほしい」と。
もちろん教育現場に外部の人を巻き込むことは大事なことですが、いつの間にかその手段が目的化していないか?と疑問に思ってしまうのです。

学校現場に人を巻き込むのは、とても大変です。
平日の昼間(しかも大体が日時も指定される)になりますし、仕事として発注できるような予算も十分にありません。
その結果、「来られる人(職場体験なら受け入れ対応ができる会社)」の中から選ぶことになります。
どんなに人脈が広くても、その日時にその場所に連れてこられる人には限界があります。

例えばグローバルな視点で物事を見られるようになってほしい、という目的があった場合、人を連れてきて話をしてもらうことありきだと、上記のような限られた範囲で海外経験のある人を連れてくることになります。
生徒の価値観を一変させるような経験を持ち、さらにそれを上手に語れる人が都合よく見つかれば良いですが、そうでないときもあるかもしれません。

そんなときのために、映像教材を自作しているケースもあります。
でも、それだったら『プロフェッショナル』とか『情熱大陸』とか、本当にすごい人を取り上げて、プロが制作した番組を使えばいいのに、と思うのは私だけでしょうか。
内容もメッセージを多種多様なものがすでにあるので、きっと目的に沿ったコンテンツが見つかると思います。

一方で、そんな大々的な人じゃなくて、もっと身近な人から感じてほしいんだ、という場合もあるかもしれません。
だったら、「(学校現場における)素人」をきちんと演出してあげなければなりません。
ゲストは演劇でいう役者です。脚本と演出が必要です。
少なくとも2週間前には打ち合わせをし、どんな目的でその場が設定されているのかを説明し、またゲストが話せる内容を聞き出してすり合わせをしなければなりません。
例えば、将来の仕事について知ってほしいなら仕事の話を多めに話しますし、学生のうちに何をすればいいのか考えてほしいなら学生時代の話を多めにします。

本来であればここまでの時間と労力をかけ、そのために予算も取ってやるべきところを、脚本も演出も役者に丸投げにしているから「新鮮な話が聞けて良かったね」で終わってしまうケースが多いのでは、と思います。
だから「キャリア教育」がいつまでも名ばかりで、徒労感だけが募っているのかな、と。

教育現場において「企画」という部分を認識してもらうのはとても難しいのですが、「コーディネート」という言葉を使うのであれば、ただ都合のつく人を連れてくるのではなく、脚本・演出・キャスティングといった役割があるということを伝えていきたいなと思ったのでした。