就活対策で資格取得を謳うから、学生は頑張りどころを間違える

世の中には2種類の資格があります。
特定の職業や業務に直結する資格と、そうでない資格。

前者は医師、薬剤師、看護師、弁護士、教師などなど。
その資格を取得していないと、その職業に就くことはできません。職業直結まではいかなくても、資格がないと扱えない機材や作業がある場合もあります。
資格の無い人には絶対に不可侵な範囲があるので、勝手に物理的資格と呼ぶことにします。

そうでない資格は挙げるとキリがないのですが、学生に身近なところでは英検・漢検・簿記・秘書検などでしょうか。
これらを心理的資格と呼ぶことにします。もちろん勝手に。
今日は、そんな心理的資格のお話しです。

心理的資格は、持っている人と持っていない人に、明確な区分はありません。
秘書検定を持っていなくても秘書にはなれるし、英語検定を持っていなくても英語を使う仕事には就けるし、簿記を持っていなくても経理になれます。

こういった心理的資格に対して、個人が勉強をしたり、受験したりすることは否定しません。
資格というガイドラインがあることで、知識を広げられたり、取得することでの達成感も得られたりするかと思います。
そういう個人がいる以上、テキストを作ったり、セミナーを行ったり、検定自体を作ったりする企業もあって当然です。

でも、学校がこの心理的資格によって就活が有利になるように見せて、資格取得支援を特色として打ち出すことには、どうしても違和感があります。

第一に、知識が詰め込まれているだけで、使えないから。
特に実務経験のない学生のうちに知識をつけても、利用シーンがイメージできていないので、ただの暗記になってしまいます。
利用シーンがイメージできてないから、その場面になっても使えない。ただの暗記だから時間が経てばすぐ忘れる。

そして、さらに問題だと思うのが、資格取得で就活が有利になると思い込ませ、時間と労力を費やさせてしまう、ということです。

就職活動での代表的な質問に「学生時代、最も力を入れたことは何ですか?」というものがありますが、これに「資格の勉強です」と答えられることほど興ざめなことはありません。(少なくとも私にとっては)
資格であろうとなかろうと、勉強しているのは当たり前。その上で他にどんなことに取り組んだことを聞きたいのに、勉強しかできないのか、と思ってしまいます。

先日、プログラマーの方々と話をする機会があったのですが、プログラミングを学びたいならとりあえず自分で何か一つ作ってみることだ、と言っていました。
作るために勉強は必要ですが、テキストを何冊も読み込むより、簡単なプログラムでいいから自分で組んでみないと、ということです。

マーケティングがやりたいなら自分でネットショップなり何なりをやって商品を売ってみる、クリエイターになりたいなら作品を作って発表する、教育だったらボランティアでも何でも良いから現場に出る、実践の機会はいくらでもあります。
もちろん、ただ経験すれば良いというものではありません。
そこから何を学び、どう改善していったのか。改善の過程で勉強もするでしょうし、そこに資格の取得も入ってくるかもしれません。
でもそのときの資格取得は、ないとできないこと、あればできることが自分の中に明確になっている、自分にとっては物理的資格かもしれません。

少なくとも学校側には、何をやらせたらいいか分からないからとりあえず資格取得させよう、ではなく、きちんと社会の現状と向き合ってほしいと思うのでした。


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