父親に「仕事を継いでもらいたかった?」と聞いてみた。

ふと思い出した、お正月の帰省中の話です。
私の実家は自営業で、歯医者をやっているのですが、このお正月に祖父が急に下の弟(高1)に対し、「お姉ちゃんもお兄ちゃんも継がなかったんだから、お前が歯医者を継ぎなさい。授業料はおじいちゃんが補助してあげるから!」と言い出しました。
私も上の弟もすでに医療とは別の分野で就職しているわけですが、歯医者にならない、ということに対して家族みんな何も違和感を持っていませんでした。
なのでここへ来て、我が家の子どもたち(つまり私と2人の弟)が「歯医者を継ぐ」ということを考えなければならなかったらしい、と知ってびっくりしたわけです。
確かに、実家が歯医者だという話をすると、「継げって言われなかった?」とよく聞かれます。
いつも「言われなかったよ」と答えてはいたのですが、確かに言われていないだけで、本当は親がどう思っていたのか、直接聞いたことがありませんでした。
ということで、実家から空港まで車で送ってもらう間にちょうど父親と二人になったので、
「お父さんは私や上の弟に歯医者を継いでもらいたかった?」
と聞いてみました。
すると、「継いでもらいたくなかったよ」と即答。
私が言葉を失っていると、「継いでもらいたくないというより、自由にすれば良いと思ってた」と続けました。
思うところはいくつもあると思うのですが、理由の一つとして話してくれたのは、高校時代の友人のことです。
その友人はある地銀で支店長になったそうなのですが、ボーナスの税金が200万くらいとられたという話を聞き、世の中お金だけではないけど、そんなに儲かる仕事もあるのに、わざわざお金をかけて苦労をして歯医者になる必要はない、と思ったそうです。
曰く、「親が子どもに同じ仕事をさせようとするなんて馬鹿らしい。芸能人の子どもが芸能人になりたがったりするけど、才能は違うんだから。ただ、儲かっている親は同じ仕事を子どもに強制する人が多い気がする。」だそうです。
うーん、私が今こんなキャリアを歩んでいられるのも、この親のお陰か、と改めて感謝。
ちなみに歯医者は儲かっているというイメージを持たれがちですが、なるのにも開業するにもお金がかかるため、初期投資の元が取れているのは父の世代(50代後半)が最後と言われているそう。
父は開業するときに100万くらいのレントゲン機械を導入して、「そんなに高いものを買って」と馬鹿にされたそうですが、今や最新のCTだと2000万レベルということで、必要となる資金も桁違いです。
父は、大学は東北で、さらに東京で勤務医をしていたこともあり、比較的色々なものを見てきたと思います。
その外からの情報と、自分の経験とを踏まえて
・社会は著しく変化していること
・世の中には数多くの選択肢があること

を知っており、「歯医者を継いでもらいたくなかった」という言葉につながったのかな、と勝手に思った次第です。
ついでに「下の弟が継ぎたいって言ったら?」と聞いてみたところ
「ムリムリ!5000万もかかるんだぞ!」とのこと。
仕事のことを知るには、その仕事に就いている人に、「自分の子どもも就かせたいか?」という質問をするのが一番リアルかもしれません。


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